Home > ギリシア・ローマ神話伝説 < デウカリオーンの系譜

デウカリオーンの系譜

デウカリオーンとピュラーから始まる系図。
系図および解説等は、「参考文献」をもとにしている。参考文献は「ギリシア・ローマ神話伝説」にまとめた。


 

デウカリオーンの系図




※青字《系譜》は系譜へのリンク


   

概説

デウカリオーンとピュラーから生じた系譜。
堕落した青銅時代の人間に対して、ゼウスは大洪水を起こした。すべての人間が死滅したなかで、デウカリオーンとピュラーはプロメーテウスの助言で箱舟を作り、生き残った。その後の人間は、両者が投げた母なる大地の骨、すなわち石から生じたとされる。デウカリオーンが投げた石から男が、ピュラーから投げた石が女となった。 
二人から生まれたヘレーン、アムピクテュオーン、プロートゲネイアは、ギリシア人の祖とされる。


名称・解説

この系譜で扱った神々や人物の名称、および簡単な解説を列挙。あいうえお順。
アルファベット表記は、ギリシア文字をローマ字に転写したもの。


名称 表記 性別 解説 参照
アイアース Aias オイーレウスもしくはイーレウス(Ileus)の子。サラミース王寺もーンの子であるアイアースが大アイアースと称されるのに対し、小アイアースと呼ばれる。トロイア戦争では、ロクリス人(Lokroi)を率いてギリシア軍に参加した。大アイアースと対照的に描かれる。トロイア陥落の際に、彼はアテーナーの祭壇に逃れたカッサンドラーとパラディオンを無理に引きずり出して犯した。そのためにギリシア軍の帰還は神の怒りを受けて困難なものとなった。  
アイオロス Aiolos ヘレーンとオルセーイスの子。アイオリス(Aiolis)人の祖。妻はエナレテー(Enarete)。風の支配者アイオロスと同一視されることもある。 系譜:Kr
系譜:Ath
系譜:Dei
系譜:Sis
系譜:Kal
アエトリオス Aethlios ゼウスとプロートゲネイアの子。妻はアイオロスとエナレテーの娘カリュケー。 系譜:Ol
アカイオス Achaios アカイア人の祖。クスートスとクレウーサの子。もしくは、ゼウス、ポセイドーンの子ともされる。  
アタマース Athamas アイオロスとエナレテーの息子、ボイオーティア(コローネイアあるいはテーバイ)の王。彼はネペレー、イーノー、テミストーの三人の妻を娶ったとされる。彼とネペレーの息子プリクソス(またはヘレー)の物語は金毛の羊をめぐるアルゴナウテースの物語へと続く。また、アタマースはイーノーが幼児であったディオニューソスを育てることに同意したので、ヘーラーが怒ってアタマースとイーノー(もしくはアタマースのみ)を発狂させた。アタマースは息子レアルコスを殺し、イーノーは末子のメリケルテースとともに海に身を投げた。その後アタマースはボイオーティアから追放されて、神託に従ってアタマンティア(Athamantia)と呼ぶ屋敷に住み、ハロス(Halos、もしくはアロスAlos)の町を建設した。その地で三番目の妻テミストーを娶る。アタマースをめぐる伝説は、悲劇等によって多様に創造され、異説が多い。 系譜:Th
系譜:Ath
アムピクテュオーン Amphiktyon デウカリオーンとピュラーの二男。アテーナイ王クラナオスの娘を妻として、クラナオスを追放して王権を得た。10年後にエリクトニオスに追われた。彼はアムピクテュオネイア(Amphiktyoneia)というギリシア諸都市の宗教的同盟の創始者ともされる。  
アルキュオネー Alkyone アイオロスとエナレテーの娘。妻はケーユクス。幸せな家庭がゼウスとヘーラーの過程と比較されたのを怒って、神々は夫をあび鳥に、妻をかわせみに変身させた。ゼウスは彼女を憐れんで、かわせみが卵を産む冬至の前後7日づつは、海を凪にした。そのためにこの「アルキュオネーの日」は嵐にならないという。  
イオダマー Iodama イトーノスの娘。ボイオーティアの神官。ゼウスと交わってテーベーを生んだ。 系譜:Ol
イオーン Ion イオーニア人の祖。クレートスとクレウーサの息子。イオーンはエウモルポスに率いられたトラーキア人を破り、アテーナイ王となる。そして住民を、ホプレーテス(Hopletes)、ゲレオンテス(Geleontes)、アルガデイス(Argadeis)、アイギコレイス(Aigikoreis)の4つの民族に分けた。  
イトーノス Ithonos アムピクテュオーンの子。アテーナー・イトーニア(Itonia)の崇拝の創始者と言われる。ニンフ・メラニッペーを妻とした。  
エナレテー Enarete デーイマコスの娘。夫はデウカリオーンの孫のアイオロス。  
エピメーテウス Epimetheus プロメーテウスの兄弟。プロメーテウスが「先に考える」を意味するのに対し、エピメーテウスは「後に考える」を意味する。彼は神々からの贈り物としてパンドーラーを得て、妻とした。 系譜:Ti
オイーレウス Oileus ロクリスのオプース(Opus)の王。ホドイドコスとラーオノメーの子。息子は小アイアース。アルゴナウテースたちの遠征に参加した。  
オプース Opus ゼウスとプロートゲネイアの子。もしくはロクリスとプロートゲネイアの子とされる。ロクリスの地の王となり、その住人オプース人に名前を与えた。 系譜:Ol
オルセーイス Orseis 山のニンフ。夫はヘレーン。両者の息子ドーロス、クスートス、アイオロスは、それぞれドーリス人、イオーニア人、アイオリス人の祖となった。  
カナケー Kanake アイオロスとエナレテーの娘。ポセイドーンと交わった。  
カリュケー Kalyke アイオロスとエナレテーの娘。ゼウスとプロートゲネイアの息子アエトリュオスの妻となった。  
キュクノス Kyknos 「白鳥」の意で、多くの同名異人がいる。
(一)ロクリスの王オプースの息子。
 
クスートス Xuthos ヘレーンとオルセーイスの子。ペロポネーソスの王。妻はアテーナイ王エレクテウスの娘、クレウーサ。両者の息子イオーンがイオーニア人に名を与えた祖。 系譜:Dei
クレウーサ Kreusa クレオーン(支配者)の女性形で、同名異人が多い。
(一)アテーナイ王エレクテウスとプラークシテアーの娘。夫はクスートス。アテーナイのアクロポリス山上の洞窟でアポローンに侵されてイオーンを生んだ。イオーンは捨てられたが、ヘルメースによってデルポイに連れて行かれ育った。デルポイに詣でたクスートスはイオーンと出会い、自分の息子だと思って連れ帰った。
 
クレーテウス Kretheus アイオロスとエナレテーの子。テッサリアの都市イオールコス(Iolkos)の創建者。兄弟のサルモーネウスの娘テューローを妻とした。両者からアイソーン、ペレース、アミュターオーンが生まれた。 系譜:Kr
クロミアー Chromia イトーノスとメラニッペーの子。  
サルモーネウス Salmoneus アイオロスとエナレテーの子。はじめテッサリアに住んでいたが、後にエーリスに移り、サルモーネー(Salmone)の町を建設した。妻はアルキディケー。ゼウスに対して高慢な態度を取ったために、ゼウスはサルモーネウスと町とを滅ぼした。 系譜:Kr
シーシュポス Sisyphos 人間の中で最も狡猾な人物とされる。アイオロスとエナレテーの息子。アトラースの娘であるメロペーを娶った。コリントスの地の王位をコリントスもしくはメーデイアによって与えられ、都市コリントス(エピュラ、Ephyraと呼ばれた)を建設した。
 同様に狡猾な人物として知られるアウトリュコスがシーシュポスの家畜を盗んだ時には、シーシュポスは家畜のヒズメに印をつけておいて、取り返した。またある伝承では、アンティクレイアとラーエルテースの婚礼の前夜に、シーシュポスはアンティクレイアを訪ねて交わった。そしてオデュッセウスが生まれたので、彼はシーシュポスと同じ狡猾さを持つという。
 またゼウスがアーソーポス河神の娘アイギーナをさらってオイノーネーに行くのを、シーシュポスは見た。河神が娘を追いかけて来たときに、泉を湧かせるのを条件にシーシュポスは彼にゼウスがさらったことを教える。それに怒ったゼウスはシーシュポスを雷霆で殺した。その後冥界についたシーシュポスは、刑罰を受ける。彼は岩を急な坂道に転げ上げねばならないが、頂上に着く手前で、岩は転げ落ちてしまう。それを永遠に続ける刑罰であった。別の伝えでは、シーシュポスは事前に妻に葬儀をしないようにと命じておいた。そしてゼウスに殺されて、冥府の神の前に行ったときに、自分の葬儀を行わない妻を罰するために一度地上に戻ることを嘆願した。許されたシーシュポスは、そのまま冥界に戻らず長寿を全うする。そして再び死んで冥界に降りたときに、冥府の神に刑罰を科されたと伝える。
系譜:Sis
ディオメーデー Diomede クスートスとクレウーサの娘。従兄のデーイオーンと結婚した。 系譜:Dei
デーイオーン Deion アイオロスとエナレテーの子。ポーキスの王。従兄にあたるディオメーデーを妻とした。 系譜:Dei
デーイマコス Deimachos エナレテーの父。  
デウカリオーン Deukalion プロメーテウスとクリュメネーの子。ピュラーを娶った。ゼウスが堕落した青銅時代の人間を大洪水で滅ぼしたときに、プロメーテウスの忠告で箱舟を作って助かった。その後の人間は、両者が投げた母なる大地の骨、すなわち石から生じたとされる。デウカリオーンが投げた石から男が、ピュラーから投げた石が女となった。二人から生まれたヘレーン、アムピクテュオーン、プロートゲネイアは、ギリシア人の祖とされる。 系譜:Ti
テクタモス Tektamos ドーロスの子。ペラスゴイ人とアイオリス人を率いてクレータ島に侵攻し、クレーテウスの娘を妻とした。彼はこの島のドーリス人の祖となった。  
テーベー Thebe ゼウスとイオダマー(イーオダメー、Iodame)の娘。ボイオーティアのテーバイに名を与えたとされる。 系譜:Ol
デルポス Delphos アポローンとメライニスの子。ほかに、ポセイドーンとメラントーの子や、アポローンとケライノーの子など諸説ある。デルポイの町に名を与えた。  
ドーロス Doros ドーリア人の祖。ヘレーンとオルセーイスの息子。 系譜:Kal
ヒュアモス Hyamos リュコーレウス(もしくはリュコーロス)の子。デウカリオーンの娘メランテイアと結婚した。ヒュアモスはヒュアー(Hya)の町の創建者。  
ピュラー Pyrrha エピメーテウスとパンドーラーの娘。夫はデウカリオーン。デウカリオーンを参照せよ。 系譜:Ti
プロートゲネイア Protogeneia 「最初に生まれた女」の意。デウカリオーンとピュラーの娘。ゼウスと交わりアエトリオスとオプースを生んだ。 系譜:Ol
プロメーテウス Prometheus イーアペトスとアシアー、もしくはクリュメネー、あるいはテミスの息子。ケライノーあるいはクリュメネーを妻とした。エピメーテウス(後で考える男)の兄弟で、「先に考える男」の意味。神々と人間が犠牲獣の分け前を決めようとしたときに、策略によって、神々が骨と脂身を、人間が肉と内臓とを得ることとした。また天界から火を盗んでかくして持ち出し、人間に与えた。またプロメーテウスはテティスがゼウスの子を得た場合に、その子は父よりも偉大になるということを知っていた。ゼウスの怒りをかったプロメーテウスは、カウカソス山に鎖でつながれ、オオワシにその肝臓を毎日ついばまれた。アイスキュロスの『縛られたプロメーテウス』ではこのことや、人間に与えたあらゆる技術について描かれる。
系譜:Ti
ペイシディケー Peisidike アイオロスとエナレテーの娘。ミュルミドーンの妻となった。  
ペリメーデー Perimede アイオロスとエナレテーの娘。  
ヘレーン Hllen デウカリオーンとピュラーの子。山のニンフ・オルセーイスを娶った。ヘレーンのから、ギリシア人の総称を表すヘレーネス(Hellenes)が付けられた。両者の息子、ドーロス、クスートス、アイオロスはそれぞれドーリス人、イオーニア人、アイオリス人の祖となった。  
ボイオートス Boiotos イトーノスとメラニッペーの子。  
ホドイドコス Hodoidokos オプースの孫。キュクノスの子。妻はラーオノメー。  
マグネース Magnes テッサリアのマグネーシア(Magnesia)に名前を与えた祖。アイオロスとエナレテーの子。水のニンフと交わった。 系譜:Ath
メライニス Melainis もしくは、メライナ(Melaina)。メランテイアとヒュアモスの娘。アポローンと交わってデルポスを生んだ。  
メラニッペー Melanippe ニンフ。イトーノスを夫としてボイオートスを生んだ。  
メランテイア Melantheia もしくは、メラントー(Melantho)。デウカリオーンとピュラーの娘。夫はヒュアモス。  
ラーオノメー Laonome 夫はホドイドコス。オイーレウスの母。  

系譜:Ath=アタマースの系譜
系譜:De=デウカリオーンの系譜
系譜:Dei=デーイオーンとミニュアースの系譜
系譜:Kr=クレーテウス、テューロー、ポセイドーンの系譜
系譜:Ol=オリュンポス神族の系譜
系譜:Pe=ペルセウス、ヘーラクレースの系譜
系譜:Po=ポントスの系譜
系譜:Sis=シーシュポスの系譜
系譜:Th=テーバイ王家の系譜
系譜:Ti=ティーターン神族の系譜


関連事項

神名・人名・解説 神名・人名・解説


HOME HOME     ギリシア・ローマ神話伝説 ギリシア・ローマ神話伝説
このページの最終更新 2007/12/23
このホームページに記載された記事の無断転用を禁じます。各ページの著作権は河島思朗に帰属します。
Copyright©2007-. Shiro Kawashima, All Rights Reserved.
カリュケーの系譜 カリュケーの系譜 ティーターン神族の系譜 カリュケーの系譜 デーイオーンの系譜 クレーテウスの系譜 アタマースの系譜 シーシュポスの系譜 クレーテウスの系譜 デーイオーンの系譜 ティーターン神族の系譜 カリュケーの系譜 カリュケーの系譜 デーイオーンの系譜 クレーテウスの系譜 アタマースの系譜 シーシュポスの系譜 クレーテウスの系譜