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アトリウム型ドムス

    アトリウム型ドムス

アトリウム型ドムス(家、Domus)の、各部の名称、解説、復元画像。
復元画像は河島が作成したもの。ポンペイの家をもとにしている。

 家の形は多種多様で、その人の財力によって大きさや部屋数も様々でした。しかし、もっとも典型的な家は、アトリウムを中心とした構造を持つものでした。このページではそのアトリウム型ドムスを紹介しています。

 一戸建て邸宅(ドムス:Domus)は古代ローマの中上流の富裕層一家族が利用していました。アトリウムを中心としたこの種の家はエトルリアを起源としています。アトリウム部分は上部の屋根が開いており、建物の中に光や新鮮な空気を取り入れるとともに、雨を溜めるために用いられていました。モデルとしたこの家は二階建てで、家の奥には庭園があります。アトリウムと庭から光を取り入れる代わりに、家の外側に開く窓はあまり作られていませんでした。内側へと向かうこの構造は、町の喧騒や危険を遮断することができました。部屋の壁には美しい絵が描かれ、床にもモザイク画などが施されていました。また庭も見事に手入れされていて、彫刻や噴水などが置かれる場合もありました。

間取り・解説

アトリウム型ドムスの間取りです。

atrium_a
クリックすると(もしくは右クリックで)大きな画像を見ることができます。Copyrighted by Shiro Kawashima.

番号 名称 ラテン語 解説
(1) 玄関 fauces
ファウケース
faucesとは「喉」という意味。アトリウム(3)へと続く細い玄関。扉を入ったところ、入り口部分の空間は「玄関ホール」(ウェスティブルム、vestibulum)とも呼ばれる。
(2) 貸店舗 taberna
タベルナ
玄関の両側には貸店舗があり、道路に向けて外に開かれていた。貸店舗の二階(ペルグラ、pergula)には借り手のための居住用の部屋があった。
(3) アトリウム atrium
アトリウム
大きな広間。建物の中に光や新鮮な空気を取り入れるとともに、雨を溜めるためにアトリウムの上部の屋根は開けられていた。雨水は「屋根の開口部」(compluvium)から「雨溜め」(impluvium)へと落ちて、そこに溜められた。アトリウム型ドムスの中心に位置する。
(4) 寝室 cubiculum
クビクルム
アトリウムの周りには小部屋が連なり、家族の寝室(cubiculum)として使われた。複数形はクビクラ(cubicula)。一般的には、寝室にはベットしか家具はなかった。
(5) 執務室・事務所 tablinum
タブリーヌム
アトリウムに向かって大きく開き、玄関に対面する部屋はタブリーヌム(tablinum)と呼ばれる。タブリーヌム(tablinum)は、書類・記録を意味する「タブラ」(tabula)から作られた言葉で、この部屋は執務室・事務所として用いられた。家の主人が事務的な作業を行なったり、取引相手や庇護民(クリエンテス)との面会などを行なうのに用いた。
(6) 翼室 alae
アラエ
アトリウムの両側にあり、開かれたスペースで、様々な目的のために使われる。ときに祖先の神聖なマスクや彫像などが収められていた。単数形はアラ(ala)で、「翼」の意味。
(7) 台所 culina
クリーナ
家の奥まった所にあり、調理をするための台所。一般的にトイレ(latrina)は台所にあり、他のゴミなどとともに下水に排出された。
(8) 食堂 triclinium
トゥリクリーニウム
寝そべって食事をとるための食堂で、トゥリクリーニウムと呼ばれる。トゥリクリーニウム(triclinium)という名前は、ギリシア語の「三」(トゥリ、tri-)と「寝椅子」(クリーネー、kline)に由来する。低いテーブルを中心に三辺に寝椅子(レクトゥス、lectus)が置かれていた。横になりながら客人と飲食し、歓談するのが饗宴のスタイルだった。
(9) 通路 andron
アンドゥロン
アトリウムからペリステュリウムへと抜ける通路。
(10) 庭園・裏庭 hortus
ホルトゥス
庭園・裏庭は見事に手入れされていて、彫刻や噴水などが置かれる場合もあった。

復元画像

上から見たところ
atrium b
斜め上から見たところ
atrium c
クリックすると(もしくは右クリックで)大きな画像を見ることができます。Copyrighted by Shiro Kawashima.

入口の様子
atrium d
内部(入口側から見た様子)
atrium e
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建物の断面図
atrium f
クリックすると(もしくは右クリックで)大きな画像を見ることができます。Copyrighted by Shiro Kawashima.
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