モンスターという言葉、テレビでも映画でもゲームでもよく耳にする言葉です。もはや日本語になっていますね。これはもちろん英語。綴りはmonster。意味は「正体の分からない恐ろしいもの、怪物、怪獣」です。
この「monster」という言葉の語源(単語のもととなった言葉)についてです。
「monster」の語源は、「monstrum(モンストゥルム)」というラテン語です。「monstrum」は、ラテン語でもやはり「正体は分からないけれども、存在を感じることができる出来事やもの」という意味です。そのために、「monstrum」は「驚異的な出来事、不可思議なもの、驚くべきことの前兆、怪物」などと訳すことができます。
例えば、ウェルギリウスの『アエネーイス』(3.658)には「monstrum horrendum」=「恐るべき怪物」という言い方が出てきています。英語の「monster」と同じ意味ですね。このように、「monster」はラテン語の「monstrum」が語源となっています。
さて、さらに「monstrum」の語源を見てみましょう。
この言葉、「monere(モネーレ)」という動詞を語源としています。「monere」は「思い出させる、気づかせる、警告する、忠告する」という意味の言葉です。
「monstrum」は「奇怪な出来事や生物の登場は神々の警告である」と考えられていたことに由来しています。奇怪なものを目にしたら、それが何だか分からないとしても、危険なもの、何か異常なことが起こる前兆であると感じる。そう感じることが「神々の警告」であると理解されるわけです。
例えば、ウェルギリウス『アエネーイス』3.59には「monstra deum」=「神々の示した驚くべき予兆」という言い回しが出てきます。「monstra」は「monstrum」の複数形。「monere(警告)」のより直接的な意味を受け継いだ「monstrum」の使用法ですね。
このように、monere(ラ)> monstrum(ラ)> monster(英)という具合に語源を遡ることができます。
ちなみに、「monster」と同じように、ラテン語の「monere」(思い出させる、気づかせる、警告する、忠告する)を語源とする英単語はたくさんあります。
monstrous「奇怪な・恐ろしい・巨大な」という 形容詞は同じ語源ですね。
monition 「警告・忠告」、monitor 「忠告者、モニター(監視者・監視装置)」
monument 「記念碑、遺物(思い出させるもの)」
admonition 「勧告・忠告」、admonitor 「勧告者・忠告者」、admonish 「勧告する・忠告する」
premonition 「予告」、premonitory 「予告の」
※adは「〜に対して」、preは「あらかじめ」という意味を含むことば。
このように、ひとつのラテン語が語源となって、様々な現代語に派生しています。