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男性形・女性形・中性形

    男性形・女性形・中性形

 ラテン語の名詞には「男性形・女性形・中性形」があります。それに伴って、名詞を修飾する形容詞にも「男性形・女性形・中性形」があります。これを「性」と呼びます。

 この「性」は実際の「性別」と同じとは限りません。もちろん、男の人なら「男性形」、女の人なら「女性形」ですが、物の場合は「男性形・女性形・中性形」にそれぞれ区分されます。例えば、「鼻」は男性形、「バラ」は女性形、「金」は中性形といたぐあいです。

 現代の英語には「性」はないですね。ドイツ語には「男性形・女性形・中性形」があります。イタリア語・フランス語には「男性形・女性形」があります。


「男性形・女性形・中性形」の典型的な形

 ラテン語の「男性形・女性形・中性形」を形で見分けることはなかなか難しいのですが、典型的な形(活用語尾)というものがあります。例えば、「鼻」は「nasus」と表記しますが、この「-us」(-ウス)で終わるもの(語尾)の大部分は男性名詞です。同じように、「バラ」を意味する「rosa」の「-a」(-ア)は女性名詞を、「金」を意味する「aurum」の「-um」(-ウム)は中性名詞を表すことが多いです。

 例として使う単語:「鼻」=「nasus」(男性名詞)、「バラ」=「rosa」(女性名詞)、「金」=「aurum」(中性名詞)

 ただし、「nasus」とは「鼻は」という「主格」(主語を表す形)の単数形です。このように、ラテン語の名詞は「格」と「単数・複数」によって変化します。例えば、「nasum」と表記した場合、「-um」で終わっていますが、これは「nasus」の変化形で「鼻を」を意味します。
 また、例えば「puer」という単語は「男の子は」という「主格」です。「-us」でも、「-a」でも、「-um」でもない語尾で終わる名詞もたくさんあります。
 このように、活用語尾だけで性を判断することはなかなか難しいのですが、少なくとも「主格」の形での大雑把な判断はできます。

 まとめ:主格の語尾が、「-us」は男性形、「-a」は女性形、「-um」は中性形、になることが多い。


形容詞の「男性形・女性形・中性形」

 形容詞の「男性形・女性形・中性形」も名詞と同じように3種類あります。また、名詞と同じように、典型的な主格の語尾は、「-us」は男性形、「-a」は女性形、「-um」は中性形、になることが多いです。

 ただし、名詞と違うのは、ひとつの形容詞に「男性形・女性形・中性形」のすべてがあるということです。名詞は基本的にひとつの単語にひとつの性ですが、形容詞はひとつの単語に3つの性です。
なぜかと言うと、形容詞の性は「名詞の性」に合わせるからです。

 例えば、「大きな鼻」は「magnus nasus」となり、「鼻(nasus)」の男性形に形容詞「大きな(magnus)」も合わせます。同様に、「大きなバラ」は「magna rosa」と表し、「大きな金」は「magnum aurum」と表します。「大きな金」なんて言い方をするかどうか分かりませんが、とにかく、形容詞の性は名詞に合わせればいいのです。

 例として使う単語:「大きな」=「magnus, -a, -um」

このように、ひとつの形容詞には3つの形、magnus(男性形)、magna(女性形)、magnum(中性形)があります。


ローマ人の名前の語尾は

 というわけで、この名詞につけられる性というものがすべての単語にあるわけです。もちろん人の名前にもあります。そのとき、男性なら男性形、女性なら女性形になるわけですね。

 ということで、ローマ人の男性は「-us」(-ウス)で終わる人が多いのです。
例えばカエサルの正式名は、「ガーイウス・ユーリウス・カエサル」です。ラテン語表記すると、「Gaius Julius Caesar」となります。最後の「Caesar(カエサル)」は活用語尾からすぐに性を判断することはできない形ですね(この場合、もちろん男性なので男性形ですが)。

 女性も同様です。例えば、「カエキリ・メテッ」という女性は、「Caecilia Metella」と表記します。「-a」で終わっていることから、この人が女性だということがすぐにわかるわけですね。

ローマ人の名前について、詳しくは「古代ローマ人の名前」をご覧ください。


こぼればなし

この傾向はラテン語から派生したイタリア語にも受け継がれています。

 例えば、イタリア語ではラテン語から受け継いだほとんどの男性名詞は今も男性名詞として、女性名詞は今も女性名詞として認識されています。ただし、ラテン語で中性名詞とみなされていた名詞の多くが、イタリア語では男性名詞となり、イタリア語には中性名詞がなくなりました。

 また、イタリア語で「男性名詞」を表す典型的な語尾は「-o」、「女性名詞」を表す語尾は「-a」です。ラテン語で男性名詞を表した「-us」はなくなってしまいましたが、女性名詞の「-a」は引き継がれています。

 先ほど紹介した「Gaius Julius Caesar」(ガーイウス・ユーリウス・カエサル)を、イタリア語表記すると、
「Gaio Giulio Cesare」となります。基本的には似てますよね。「-us」が「-o」になっただけですから。

 ちなみに、私(河島思朗)の名前をアルファベット表記すると「Shiro Kawashima」となります。イタリア人などのヨーロッパの人には、私の名前は男か女か一見すると判断できない名前、になるようです。「Shiro」は男性形なのに、「Kawashima」は女性形ですからね。いっそ、「Shiro Kawashimo」としたほうがすっきりするのかもしれません。


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